従業員を雇う前に確認すべきインドネシア労働法のポイント

インドネシア進出を検討されている、または既に現地で事業を展開されている日系企業の皆様、従業員の雇用は順調でしょうか?インドネシアは独自の労働慣習と複雑な労働法を持つ国です。特に、雇用契約書の作成や労使間のトラブル対応は、現地の専門知識が不可欠です。

本記事では、「インドネシア 雇用」と「労働契約」に焦点を当て、従業員を雇う前に確認すべきインドネシア労働法のポイントを解説します。法律事務所の視点から、人事担当者や経営者の皆様が知っておくべき重要な事項をまとめました。また実際にインドネシア現地で従業員の雇用を考えている方はこちらをご確認ください。 こちら

労働契約の種類を理解する
インドネシアの労働契約は、主に以下の2種類に大別されます。

有期労働契約(PKWT)
特徴: 期間や特定業務が定められた契約です。会社と従業員の間で一定期間延長される場合があります。ただし、有期労働契約、アウトソーシング、労働時間と休憩、および解雇に関する2021年インドネシア共和国政府規則第35号第6条に基づき、有期労働契約の実施期間は最長で5年間と定められています。

メリット: 企業の需要変動に対応しやすく、柔軟な人員計画が立てられます。
注意点: 法律で定められた業務にのみ適用され、試用期間は設定できません。期間満了前に解雇する場合、補償金の支払い義務が発生します。

無期労働契約(PKWTT)
特徴: 期間の定めがない一般的な雇用契約です。正社員として採用する場合に適用されます。
メリット: 従業員の長期的な定着を促し、組織の安定に繋がります。
注意点: 解雇には正当な理由と複雑な手続きが必要です。安易な解雇は、労働者からの訴訟リスクを高めます。 インドネシア人を雇用する際の詳し医情報に関しましてはこちらからご確認ください こちら

試用期間(Probationary Period)の正しい知識
日本の試用期間とは異なり、インドネシアの労働法では、**無期労働契約(PKWTT)**の場合にのみ、最大3ヶ月の試用期間を設定することができます。
• 有期労働契約(PKWT)では、試用期間は設定できません。
• 試用期間中の解雇は比較的容易ですが、書面による通知が必要です。
• 3ヶ月を超える試用期間は無効と見なされ、雇用開始日から正社員として扱われます。

解雇(Termination of Employment)のルール
インドネシアの労働法は、労働者の保護を非常に重視しています。そのため、解雇は厳しく制限されており、正当な理由がなければ原則として認められません。

解雇が可能なケース
• 会社の経営状況悪化:倒産、事業閉鎖など。
• 従業員の重大な非行:横領、会社の機密情報漏洩など。
• 従業員のパフォーマンス不振:就業規則に基づく複数回の警告後も改善が見られない場合。
• 従業員の自己都合退職

解雇手続きのポイント
• 労働関係紛争解決機関への届出: 解雇理由や対象者、補償金の詳細を記した書類を提出する必要があります。
• 解雇通知書: 正式な解雇通知書を従業員に手渡し、受領サインを得ることが重要です。
• 解雇補償金(Severance Pay)の支払い: 勤続年数や解雇理由に応じて、法律で定められた補償金を支払う必要があります。計算方法は非常に複雑なため、専門家への相談が必須です。
解雇に関する詳しい情報に関してはこちらをご確認ください こちら

給与と手当
インドネシア 雇用における給与体系は、地域ごとの最低賃金(UMP/UMK)がベースとなります。

• 最低賃金: 毎年、各州・県で設定される最低賃金は、法律で定められた最低限の給与です。
• 時間外労働(残業): 労働時間の上限は週40時間です。これを超える場合は、時間外手当(Overtime Pay)を支払う義務があります。計算方法は、労働時間帯や勤務日によって異なります。
• 宗教手当(THR): イスラム教のレバラン(断食明け大祭)など、宗教的な祝日の前に支払われるボーナスです。勤続1年以上の従業員には、月給1ヶ月分を支払う必要があります。

労使紛争(Industrial Dispute)の解決
労働契約や就業規則に関するトラブルは、労使紛争に発展する可能性があります。

• 円満解決の努力: 労使双方の話し合いが第一です。書面での記録をしっかり残し、双方の合意を重視します。
• 労働関係紛争解決機関(PHI): 労働省の仲介、メディエーション、そして労働裁判所への提訴という段階を経て解決します。

まとめ

インドネシアでの雇用は、日本とは異なる複雑な労働法の理解が不可欠です。特に、労働契約書の作成や解雇の手続きは、専門知識がないと大きなリスクを伴います。

• 労使紛争を未然に防ぐためには、労働契約締結時に条件を明確にし、就業規則を整備することが重要です。
• 解雇やトラブルが発生した場合は、安易な自己判断を避け、現地の法律に精通した専門家(弁護士、コンサルタント)に相談することをお勧めします。

また労働法規は**2023年インドネシア共和国法律第6号(2022年法律に代わる政府規則第2号の雇用創出に関する制定)および2003年インドネシア共和国法律第13号(労働力に関するもの)**によって規定されています。後者はもはや全体として適用されませんが、2023年法律第6号で規定されていない事項については、2003年法律第13号の規定が引き続き有効となります。

当法律事務所は、在インドネシアの日系企業様を専門とし、労働法に関するご相談を多数承っております。従業員の雇用や労働契約に関するご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。